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世界初・薪能と薪京劇の競演

2006年中国文化フェスティバル特別公演
世界初・薪能と薪京劇の競演

番組表
オープニング「白猿献寿」
火神:黄彦忠 白猿:年金鵬 北京京劇院梅蘭芳京劇団共演
昆劇「長生殿ー楊貴妃」
玄宗皇帝:張軍 楊貴妃:沈 麗 北京京劇院梅蘭芳京劇団共演
京劇「覇王別姫」
項羽:陳俊傑 虞美人:張馨月
狂言「太刀奪」
太郎冠者:山本則直 主:若松隆 道通の者:遠藤博義
能「楊貴妃」
楊貴妃:渡邊荀之助 方士:殿田謙吉 所の者:遠藤博義
笛:寺井宏明 小鼓:住駒充彦 太鼓:佃良太郎
地謡:小倉敏克 広島克栄 水上優 高橋憲正 辰巳孝弥
亀井雄二 藪克徳 金野泰大
後見:辰巳満次郎 宝生和英
半能「項羽」
項羽:深見東州 虞氏:辰巳大二郎 草刈男:殿田謙吉 草刈男:則久英志
笛:寺井宏明 小鼓:住駒充彦 太鼓:佃良太郎 太鼓:徳田宗久
地謡:小倉敏克 広島克栄 水上優 高橋憲正 辰巳孝弥
澤田宏司 東川尚史 金野泰大
後見:辰巳満次郎 山内崇生

*情況により出演者、演目、順番が変更になる事があります。御了承下さい。

半能「項羽」シテ 深見東州紹介

 本名、半田晴久。同志社大学経済学部卒。武蔵野音楽大学特修科(マスタークラス)声楽専攻修了。西オーストラリア州立エディスコーエン大学芸術学部大学院修了。創造芸術学修士(MA)。中国国立清華大学美術学院美術学学科博士課程修了。文学博士(Ph.D)。中国国立浙江大学大学院日本文化研究所客員教授。カンボジア大学総長、人間科学部教授。カンボジア国王よりコマンドール友好勲章(外国人に与える最高勲章)を、民間人で初めて授与される。また、カンボジア政府よりモニサラポン・テポドン最高勲章を授与される。中国合唱事業特別貢献賞、西オーストラリア州芸術文化功労賞受賞。西オーストラリア州首都パース市、及びスワン市の名誉市民(「the keys to the City of Perth」、「the keys to the City of Swan」)。紺綬褒章受章。
宝生流能楽師。社団法人能楽協会会員。宝生東州会会主。「東京大薪能」主催者代表。その他、茶道師範、華道師範、書道教授者。NPO法人 世界芸術文化振興協会会長。
中国国家一級声楽家、中国国家一級美術師、中国国家二級京劇俳優に認定。中国国立歌劇舞劇院(オペラ団)正団員、海外芸術顧問。中国合唱協会名誉理事長。北京京劇院正団員。黒龍江省京劇院客演団員。梅蘭芳京劇団団員。梅蘭芳基金会理事長。黒龍江省京劇院京劇振興協会会長。中国国立戯曲学院客員教授。北京戯曲職業学院名誉院長、北京戯曲職業学院客員教授。中国老教授協会名誉教授。北京戯校教育発展基金会会長。
京劇は、人民大会堂にて王金 氏と葉蓬氏に正式入門、1999年10月「西遊記」、同12月「虹橋贈珠」での二郎神役、2000年7月「古城の再会」での関羽役、2002年3月「漢津口」での関羽役などを演ず。2002年、「第四回国際京昆アマチュアテレビ大コンクール」(中国)にて、参加者一千人中金賞を受賞。また2003年2月、シドニー・オペラハウスにて「シドニー京劇公演」に関羽役で出演し、絶賛を博す。中国ではアマチュアコンクールの金賞受賞後に、その高い芸術性を評価され、国家二級京劇俳優(2002年12月)に認定されている。
能は、同志社大学能楽部宝生会にて柏原仁兵衛、辰巳孝に師事。森田流笛を貞光義次、寺井啓之、帆足 正規に師事。一噌流笛を藤田次郎に師事。幸流小鼓を幸信吾に師事。1972年初舞台「鶴亀」仕舞。1996年 初シテ「猩々」。1999年「石橋」披演。2000年「乱」披演。2001年「石橋」(連獅子)披演。2002年「翁」披演。今回の「項羽」で、43度目のシテとなる。10年間で43度のシテは、年間平均4.3度になり、宝生流でベスト10に入る。能楽の国内及び海外普及に寄与し、イギリス演能旅行、中国演能旅行、米国のメトロポリタン美術館能や国連薪能、また、エジプトのスフィンクス薪能、カンボジアのアンコールワット薪能等を主催し、自らも演能す。

御挨拶

特定非営利活動法人世界芸術文化振興協会では、日本の伝統芸術である能楽が若い世代にも親しまれ、継承されることを願って、毎年お台場や新宿都庁前広場などで、無料公開の「東京大薪能」を開催しております。また、中国の伝統芸術である京劇や昆劇の振興にも力を入れており、日本やシドニーでの京劇公演の開催や、中国の梅蘭芳基金会への支援など、さまざまな支援活動を行なっています。そして、今回世界初の「薪能・薪京劇の競演」という、夢のような舞台を実現できたことを嬉しく思う次第です。
今回は、「楊貴妃」と「項羽」という、日本人にも大変馴染みの深い人物の物語を、能と京劇(昆劇)という、それぞれの解釈で上演いたします。京劇と昆劇は、昆劇の方が能楽と同じぐらい古いのですが、内容は京劇とほとんどかわりません。ですから、これを総称して京劇と呼ぶことをお許し下さい。そして、物語を比較すると、京劇と昆劇では、ほとんど差はなく、楊貴妃や項羽の生前のドラマを中心に描いています。ところが能では、それぞれの死後のドラマを描いているのです。ですから、京劇や昆劇と能と両方ご覧いただいて、初めて楊貴妃と項羽のドラマが完結するとも言えます。
ところで、本公演は、「中国文化フェスティバル」の一環として行われるものですが、中国と日本の演目が、お互いを補い合うような舞台になります。これは、日中友好を象徴する意味があり、誠に意義深いものではないかと存じます。
なお、能「楊貴妃」のシテは、当協会の副会長であり、重要無形文化財指定保持者でもある渡邊荀之助師。半能「項羽」は、私がシテをつとめさせて頂きます。
最後になりましたが、今回の開催にあたり、ご協力下さった関係各位に、衷心より御礼感謝申し上げます。

特定非営利活動法人 世界芸術文化振興協会
会長  半田 晴久(深見 東州)

能楽・狂言演目解説 (堀上謙・能楽評論家)
能「楊貴妃」

能「楊貴妃」はほとんどを、有名な唐の詩人白楽天の詩「長恨歌」から借りているが、三番目物(鬘物)の中で中国の女性を主人公にした作品はまず珍しい。
唐の玄宗皇帝は、安禄山の乱で馬嵬が原で殺された楊貴妃のことが忘れられず、仙術を会得した方士(ワキ)に命じて、貴妃の魂魄のありかを尋ねさす。方士は天上から黄泉まで探し、ついに蓬莱宮へとやってくる。そこで貴妃の霊(シテ)に出会った方士は、皇帝の嘆きを伝え、ここに来た証拠に帝と貴妃が交わした言葉を教えて欲しいと頼む。
貴妃は、七夕の夜に比翼の鳥、連理の枝となろうと二人で誓い合ったという話をする。そして、自分はもとは仙女であったと身の上を語り、舞を舞って見せると、証拠の形見の品をもって帰る方士を一人淋しく見送る。
主題は、恋慕の情であり、絶ちがたい愛情ゆえの哀傷だといってよいだろう。作者の金春禅竹は本曲を常の夢幻能仕立てにせず、独特の構成にした。つまり、シテがあの世からやってくるのではなく、ワキがシテの住む世界を訪れまた帰ってゆくという、夢幻能の逆手の手法である。仙界の麗人を描き、昔を偲ぶという情緒ゆたかな曲想は、「長恨歌」の文学的イメージと重なり合うことによって、さらにその深さが味わえよう。『定家』『小原御幸』とともに〈三婦人〉と呼ばれているが、気品の高い能である。

狂言「太刀奪」

 北野神社へ参詣に出掛けた主人(アド)と太郎冠者(シテ)は、雑踏の中に立派な太刀を持った通行人(アド)を見付け、その太刀を奪うことにする。そこで冠者は男に近づき太刀に手をかけるが、逆に脅され主人の刀を奪われてしまう。主人と冠者は刀を取り返そうと、男を待ち伏せして捕らえるが、冠者は男を縛る縄をゆうゆうと綯いはじめる始末。いざ縛ろうとしても失敗を繰り返し、挙げ句主人を縛ってしまい、男に逃げられてしまう。「泥棒を捕らえて縄を綯う」いわゆる(泥縄)の諺を舞台化した曲。太郎冠者はあまりに愚かで非現実的であるが、縄を綯う場面はしごくリアルで可笑しい。

半能「項羽」

 古代中国の武将項羽とその寵姫虞氏の物語に取材した作品だが、直接には『太平記』の「漢楚合戦の事」に拠ったと思われる。
中国は長江の上流・烏江のほとり。草刈り男(ワキ)たちが、家に帰るため川辺で渡し船を待っていると、一人の老人(前シテ)が船を漕ぎ寄せてくる。草刈り男は老人が船賃はいらぬというので便乗するが、向こう岸に着いて降りようとすると船賃をくれという。約束が違うと怒ると、老人は金銭でなくてあなたの持っている草花でいいのだという。そしてこの花は、楚の項羽の妃虞氏を葬った塚から生えた美人草だと説明し、項羽の戦死の有様を語り、自分がその項羽の霊であると明かして消え失せる。(中入り)
その夜、草刈り男が読経して項羽の後世を弔っていると、夢の中に項羽(後シテ)と虞氏の霊(ツレ)が現われ、漢との戦いで四面楚歌に陥り虞氏が自決して最期をとげ、自分も悲憤慷慨のうちに自刃した様子を再現して見せる。
本公演は半能なので、後半、鉾を持った項羽の霊が現われ、激戦の状態と愛人を失った悲しさ、口惜しさ、怒りの表現をさまざまな仕科と(舞働き)で見せる場面が中心になる。

能楽出演者紹介

能「楊貴妃」 シテ
渡邉荀之助

重要無形文化財総合指定保持者。能楽宝生流シテ方。昭和二十四年石川県金沢市に生まれる。 父、兄共に宝生流シテ方重要無形文化財指定という環境のもと、三歳で能の稽古を始め、四歳で初舞台を踏む。東京芸大音楽部邦楽科に入学。同大学を中退し、第十八世宝生流宗家・宝生英雄の内弟子となる。
昭和五十二年に独立。「賀宝会」を主催。
東京、金沢、他での演能活動、海外公演など精力的に活動する。昭和五十八年「道成寺」、昭和六十一年「石橋」、平成十年「翁」披演。平成十年、金沢ルネッサンス冬まつりで「ボレロ」(ラヴェル)を舞う。
平成十一年吉村雄輝追善会で「楊貴妃」出演。能と京劇の新作「西遊記」出演。平成十二年、能とバレエの新作「HAGOROMO」でマイヤ・プリセツカヤと共演。伝統を重んじながらも、「新感覚の芸人」として独自の生き方を志す。
NPO法人世界芸術文化振興協会副会長。

能「楊貴妃」能「項羽」地頭
小倉敏克

宝生流シテ方。
昭和二十一年十一月十二日千葉県千葉市に生まれる。昭和三十三年入門、宝生九郎に師事。昭和三十四年初舞台「鞍馬天狗」花見。昭和五十年「乱(和合)」、同五十六年「道成寺」、同五十七年「石橋」を披演。輝雲会を主宰。重要無形文化財総合指定保持者。

能「楊貴妃」能「項羽」後見
辰巳満次郎

宝生流シテ方。
昭和三十四年生。昭和三十八年初舞台「国栖」子方。昭和五十三年、東京芸大音楽学部邦楽科に入学と同時に、十八代宗家、故宝生英雄の内弟子となる。「あまねく会」を主宰。(社)宝生会、(社)能楽協会会員。七宝会同人。大曲「道成寺」・「石橋」連獅子・「乱」披演。
重要無形文化財総合指定保持者。NPO法人世界芸術文化振興協会理事。

狂言「太刀奪」シテ
山本則直

大蔵流狂言方。一九三九年生。故三世山本東次郎の次男。重要無形文化財総合指定(社団法人日本能楽会会員)。
昭和十九年『伊呂波』のシテで初舞台。
昭和五十一年度芸術選奨文部大臣新人賞受賞。
平成十七年度観世寿夫記念法政大学能楽賞受賞。
平成十八年度芸術選奨文部科学大臣賞受賞。

京劇・昆劇演目解説
京劇「白猿献寿」

 神話を改編した作品。白猿は、自分の母の命を救うため、天上界にある蟠桃園に行き、神の桃を摘もうとしたが、途中で、火神に道をさえぎられる。白猿は火神に勝ち、桃園に走って行き神の桃を取って母親の命を救うのであった。

昆劇「長生殿-楊貴妃」

 楊貴妃は玄宗皇帝の寵愛を受け、その威光は兄弟親類に及んでいた為、国中の反感が高まっていた。安禄山が謀反を起こし長安に迫ってきた時、玄宗は都を捨て、楊貴妃を連れ蜀に逃れんとする。馬嵬坡に到った時、護衛の兵士たちは玄宗皇帝に楊氏一族の処刑を迫る。玄宗はやむなく楊貴妃に自縊を命ずる。反乱収束の後、退位した玄宗は楊貴妃を思い悔やみ、ある夜、夢に楊貴妃を見た玄宗は、道士を召してその魂を探し求めさせると、楊貴妃は蓬莱山で仙女になっており、玄宗は道士を通じ逢瀬の日を約束する。やがて時が至り、玄宗は月に上り楊貴妃と再会し、二人は永遠の夫婦となったのであった。

京劇「覇王別姫」

 「四面楚歌」の物語。項羽は劉邦に追い詰められ、四方から聞こえてくる楚の歌声に、すでに楚が漢軍に制圧されたと思い込み、軍営の中愛妾虞姫(虞美人)と別れの杯を交わす。虞姫は、自分が項羽の足手まといになるのを恐れ、自害を決意する。そして剣舞を見事に舞ってみせた直後、一瞬の隙をついて項羽の剣を抜き、自らの喉笛をかき切るのであった。項羽と虞姫の悲壮な心情が、歌、セリフ、剣舞を通してひしひしと胸に迫る作品である。

昆劇出演者紹介
張 軍

国家一級俳優。上海戯曲学校第三期昆劇俳優クラス、上海交通大学文化管理専攻を卒業。昆劇俳優蔡正仁氏らに師事する。舞台姿は美しく歌声も澄んでおり、役柄も幅広い。
『写状』『埋玉』『韓信拝帥』『亭会』『断橋』『偸師』等で主演を演じ、また『長生殿』『司馬相如』『牡丹亭』等、多くの劇で生という役柄の中でも、様々な演じ分けを行っている。
全国昆劇青年俳優交流公演において、蘭花優秀新蕾賞を獲得し、また第一回中国昆劇芸術祭表演賞、宝鋼高雅芸術賞、上海白玉蘭戯劇表演芸術主役賞等を受賞。2002年には、文化部主催の全国昆劇優秀中青年俳優コンクールの中で、大賞「促進昆劇芸術賞」を受賞し、上海市第二回「文化新人」、第十一回「十大傑出青年」の称号を獲得。
上海市青年文学芸術連合会副会長、上海戯劇家協会会員。

沈昳麗

 国家二級俳優。上海市戯曲学校第三期昆劇俳優クラス、上海戯劇学院戯曲舞踊分院戯曲表演専攻を卒業。王英姿に師事し、また昆劇俳優張静嫻、張洵澎らに指示する。基本は確実で舞台姿も美しく、歌の節回しも美しく、細やかな演技に定評がある。
『尋夢』『説親』『百花贈剣』『受吐』等伝統劇をはじめ、『牡丹亭』『玉簪記』『司馬相如』等多くの劇に出演、好評を得る。
全国昆劇青年俳優交流公演において、蘭花優秀新蕾賞を獲得し、第一回中国昆劇芸術祭優秀表演賞、宝鋼高雅芸術賞、上海白玉蘭戯劇表演芸術主役賞等を獲得。2002年には、文化部主催の全国昆劇優秀中青年俳優コンクールの中で、大賞「促進昆劇芸術賞」を受賞。上海市第四回「文化新人」称号を獲得。
上海市戯劇家協会会員。

公演日
2006年11月19日(日)
入場無料
会場
六本木ヒルズアリーナ
(東京都港区六本木 6-10-1 TEL: 03-6406-6611)
開演
17:15(解説)  17:30~(能楽・狂言始まり)
出演
宝生流能楽、家元宝生英照氏を主とした公演団体
北京京劇院梅蘭芳京劇団 ・ 上海昆劇団
共催
中国対外文化集団公司
NPO法人世界芸術文化振興協会
中国文化芸術センター株式会社
協力
森ビル株式会社
お問い合わせ先
世界芸術文化振興協会
(杉並区西荻南2-18-9菱研ビル2F TEL:03-5336-3507 FAX:03-5336-3509)
中国文化芸術センター(株)
(足立区千住1-4-1東京芸術センター1501 Tel:03-5813-9188 Fax:03-5813-9199)